◇◇月の女神 ヒナ ◇◇
              - Hina -

ハワイ島ワイルク川を少しのぼったところに、レインボー・フォールズという滝があります。
この滝の裏側にある洞窟で、ヒナは夫アイカナカと一緒に暮らしていました。

ヒナはタパ作りの名人です。
天気のよい昼間には川岸でタパ作りをします。
作ったタパで服を仕立て、食事の準備をし、それから遠くの水場まで飲み水を汲みに行く 
という忙しい毎日を送っていました。
日々の忙しさに疲れ、自分勝手なアイカナカの心無い言動に、ヒナは満たされない思いを
感じていました。逃げ出したい思いも…。

ある日、アイカナカの言いつけで川でエビを捕っていたヒナの足元に、きらきらと光り輝く
美しい虹が降りてきました。
そして、どこからともなく聞える天の声。
 「ヒナ、この虹をつたって天にのぼりなさい。穏やかに暮らすことができるだろう。」と。

一度はためらったヒナですが、思い切って虹をのぼることにしました。
虹をのぼり雲の上に出たところで、猛烈な太陽の強い日差しに頭がもうろうとし、ヒナは足が
もつれて地面へ落ちてしまいました。

あたりはすでに日が暮れ、夜空には月。
太陽の暑さで乾いた喉を潤そうとヒナが家に帰ると、アイカナカがすごい剣幕で怒鳴ります。
ヒナは何も言わず、水を入れた瓢箪とタパ作りの道具を手にとり外へ出ると、ヒナの足元に
ムーンボウが現れました。
ヒナは、今度はためらうことなく月へと続くムーンボウの道を歩いていきます。
追ってきたアイカナカの手を必死で振りほどき、アイカナカに強くつかまれて痛む足を
ひきずりながら、月への道を一歩一歩進んでいきました。
その後、ヒナは月でタパを作りながら平和に暮らしているそうですよ。

満月の夜、夜空を見上げてみませんか♪
痛めた足首を前に伸ばし、月にもたれかかるように腰掛けたヒナの姿がみえるかも
しれませんよ。